ストレッチ

間違った認識が蔓延? ストレッチで期待できる本当の効果とは

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ストレッチ 効果

あなたがストレッチをする目的は何ですか? みなさんこんにちは。笹塚トレース整骨院の石垣です。身体の痛みや不調の原因が「筋肉の硬さ」や「柔軟性の低下」によるものであるケースは多くあります。その対処法として広く知られている「ストレッチ」ですが、その効果についてイメージと現実には大きな差があります。ストレッチの効果を正しく理解し、目的に応じたストレッチを実践することが大切になります。

(a)目的によっては有効

ストレッチの主な効果は「可動域の拡大」です。可動域の拡大はケガの予防に大きく貢献する重要な要素です。激しいコンタクトスポーツ(新体操、ラグビー、相撲、柔道など)ではアクシデント的に関節の可動域が、正常な可動域を超えた範囲まで拡大されることがあります。これはケガに直結する問題です。この問題を解決または予防する目的で行なうストレッチは非常に効果的です。

(b)誤った「認識」は逆効果

ストレッチは一般的に「筋肉を伸ばす」と認識されています。しかし実際は筋肉がストレッチによって伸ばされると脊髄反射である「伸張反射」が誘発され、筋肉は短縮する方向に働きます。つまり筋肉を伸ばしているつもりが、実は反対の作用を引き起こしているのです。特に痛みを我慢しながらのストレッチは筋肉にとって「負担」となってしまうので誤った認識でのストレッチには注意が必要です。

(c)誤った「方法」は逆効果

上述した伸張反射を回避するためには「ゆっくりとした動作」でのストレッチが重要です。筋肉を伸ばそうとするあまり、痛みを我慢して無理に関節を広げたり、勢いをつけて伸ばしたりするストレッチの方法は、可動域を拡大するという本来の目的とは逆効果の結果を招きます。ストレッチの効果を享受できないだけでなく、筋肉にとって悪影響を与える事になります。

ストレッチの効果を引き出すポイント

可動域を拡大し、筋肉を緩めるといった本来のストレッチの効果を引き出すためのポイントについて解説します。

(a)勢いをつけるのはNG

ストレッチの大敵は「伸張反射」です。伸張反射とは意識的にコントロールできる性質の反射ではありません。これは「筋肉が伸張された」という情報をキャッチした脳が自動的に(反射的に)発生させる現象で、無理な伸張によって筋肉や関節が破壊されるのを回避する予防的な働きになります。勢いをつけたストレッチ動作の方が「効果を実感しやすい」という風に考えがちですが、急激な伸張は全て伸張反射によって伸張を抑制されてしまうことを理解しましょう。

(b)伸ばした状態をキープ

ストレッチに勢いをつけた動作は必要ありません。ストレッチに必要なのは「伸ばした状態をキープする時間」です。しかも「伸びてる感」はあまり強くない方が余計な「伸張反射」を抑制できます。心地良い程度の「伸ばされてる感」の状態をキープし、次第に「伸ばされてる感」が消失して何も感じなくなった段階で徐々に可動域を拡大していくことを繰り返します。ストレッチ動作によって強い「伸ばされてる感」や「筋肉の緊張」を感じている場合は本来の目的が果たされることはありません。

(c)継続は力なり

ストレッチによって可動域の拡大という目標を達成したケースは「継続」が大前提となっています。特別な方法や効率的なやり方はありません。毎日ストレッチを継続するだけです。継続するだけで可動域が拡大するというシンプルさの一方で、可動域を拡大する唯一の方法がストレッチなのです。

ストレッチが効果的な状況

日常的に継続しておこなうストレッチ以外で、ストレッチの効果的な状況について解説します。

(a)同じ姿勢が長時間継続した後

ストレッチとは「関節を動かす行為」です。デスクワークや立ち仕事など長時間にわたり「同じ姿勢」を継続したタイミングでは関節や筋肉はほとんど使われない状況となります。そこでストレッチを行なうことでデスクワークや立ち仕事では使用されない筋肉や関節を意図的に使用してあげることができます。長時間にわたり同じ姿勢が継続する場合は積極的にストレッチを実施し、定期的に関節や筋肉を動かしてあげることで動き出しのタイミングを頻繁に発生するぎっくり腰などを予防することができます。

(b)激しい運動の前

ランニングやスポーツなど日常生活における運動量を大幅に超えるような運動を行なう前にストレッチを行なうことはケガの予防になります。事前に関節の可動域を拡大させておくこと、筋肉に柔軟性を与えておくことが運動におけるパフォーマンス向上につながります。

(c)激しい運動の後

激しい運動を行なったあとは筋肉に緊張が残り、関節にも負担が蓄積しています。そのまま放置してしまうと関節可動域の制限や筋肉の張りを残してしまうことになります。また運動によって精神状態が緊張していると筋肉も強張っています。つまり緊張した身体の状態からリラックス状態へと回帰させる目的でストレッチを行なうとよいでしょう。

日常生活・激しい運動前・激しい運動後の3つのフェーズで考え、それぞれのフェーズを移動するタイミングでストレッチを活用するのが有効です。

ストレッチと肉離れの関係

筋肉の肉離れは筋繊維の損傷です。つまりストレッチは基本的にNGとなります。

(a)肉離れにストレッチはNG

肉離れは主に急激な負荷によって誘発されます。または通常の関節可動域を超えた可動域が強制されたときに引き起こされます。肉離れによる疼痛がある状況でストレッチをする事は無いと思いますが、疼痛が消えて「そろそろ動かしても良いかな」といった治りかけのタイミングでストレッチをしてしまうケースが危険です。肉離れは筋繊維が伸張されて発生するケガなのでストレッチは肉離れを悪化させる方向に作用してしまいます。肉離れ後のストレッチ再開時期は十分に筋繊維の回復期間を設けておくことが大切になります。

(b)筋肉の硬さには効果薄

肉離れ発生の原因の1つとして「筋肉の硬さ」があります。筋肉が硬かったから肉離れになってしまったという認識を持っていると、ストレッチで筋肉を柔らかくすれば良いと考えがちです。しかし上述したように、単純に関節の可動域を拡大するだけのストレッチでは筋肉が柔らかくなるという効果はあまり期待できません。筋肉が柔らかくなるメリットはほとんど皆無なのに対し、筋繊維を伸張してしまうことで肉離れを悪化させてしまうリスクの方がはるかに高いといえます。

(c)肉離れの予防には効果大

すでに肉離れが発生した後のストレッチは注意が必要ですが、まだ肉離れが発生する前の段階で予防目的でストレッチをおこなうことはオススメできます。関節の可動域をあらかじめ拡大しておくこと、筋肉に柔軟性を持たせることは肉離れの予防に効果的です。

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「ストレッチ 効果」に関する疑問

ストレッチの効果に関する疑問について解説します。

(a)肩こりや腰痛における筋肉の硬さにストレッチは有効か

肩こりや慢性腰痛の多くは「筋肉の硬さ」が原因の1つです。そこで予防や改善策として「ストレッチをすれば筋肉が柔らかくなるのではないか」と考えます。しかし伸張反射により硬い筋肉が無理に伸ばされると筋肉はさらに硬くなる方向に左右すること、ストレッチにおいて期待できる主な効果は関節可動域の拡大であることを考慮すると「ストレッチで肩こりや腰痛が改善される」という期待は薄いと言わざるを得ません。器械体操やダンスをしている人など関節の可動域は何もしていない人と比べると遥に拡大されています。しかしだからといって肩こりや腰痛、筋肉の硬さが無いかといえばそうではありません。どんなに関節の可動域が広くても筋肉は硬くなってしまうのが現実です。

(b)日頃からストレッチした方がいいの?

ストレッチは日頃から習慣化して行なうことで効果を得られます。例えば身体に負担がかかるデスクワークや立ち姿勢は仕事として毎日あります。それに対してストレッチをする頻度は週に2,3回ではストレッチによる効果よりも負担の方が上回ってしまいます。身体にかかる負担を解消する目的でストレッチを取り入れるのであれば、しっかりと時間をかけてストレッチに取り組むことが重要です。

(c)ストレッチをしてはいけない状況ってあるの?

ストレッチをしない方が良い状況は基本的にありません。しかし前述したように肉離れやアキレス腱損傷など筋肉や腱が伸展されることは引き起こされる「ケガ」の回復期はストレッチを行なうべきではありません。肉離れやアキレス腱損傷において痛みの感覚が消失した時点で「完治した」と考えがちですが、損傷を受けた筋繊維や腱組織の修復は遅れて追い付くケースがあります。つまり感覚としての痛みの消失と実際に損傷を受けた箇所の修復に「時間差」が生じることでストレッチや運動の開始時期の判断を誤ってしまい再発を招いてしまうのです。ケガの回復期のストレッチは時期を慎重に判断する必要があります。

本記事で主な主張は「ストレッチは関節の可動域拡大には貢献するが、やり方を誤ると筋肉がかえって緊張し硬くなる」という内容です。少なくとも「ストレッチはとりあえず伸ばしておけばよい」といった認識ではストレッチ本来の効果が得られないだけでなく、悪影響を及ぼす可能性がある点についてよく理解してほしいと思います。

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