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骨盤矯正に効果はある? 骨盤矯正に潜む業界の意図とは

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骨盤矯正 効果

整骨院や整体、マッサージ屋さんでよく見かける「骨盤矯正」ですが、キャッチーな言葉なのでなんとなく「効果がありそう」「安全で良いもの」というイメージを抱く方も多いと思います。そこで今回は骨盤矯正に潜む業界の意図について解説します。

(a)自費診療メニュー

おおよそ10年前、主に整骨院業界では「自費診療メニューの活用」が急務でした。それまでの整骨院業界の収入の柱は「保険診療」で、できるだけ多くの患者を集め、多くの患者を保険で治療することで売り上げを作っていました。当時の保険請求制度はまさに「無法地帯」で、現在の職業倫理感とは比べものにならないほど儲かる仕組みでした。しかしそんな無法地帯に規制が入り始めると保険による売り上げが低下し、次なる収入の柱として注目されたのが保険外治療である「自費診療」です。当時の整骨院業界はどの院も保険診療しか行なっておらず、新しい、そして革新的な自費診療として骨盤矯正が注目されました。

(b)高単価メニュー

保険診療における施術時間(手技による施術)は地域差がありますがおおよそ10分から20分で、金額は数百円程度の負担で済みます。つまり保険診療は基本的に単価が低く、多くの患者を集客しなければ売り上げが作れない仕組みなのです。そこで骨盤矯正では施術時間を30~40分に設定し「時間が長いから料金が高い」という免罪符を獲得することになります。施術時間が長く効果もあるという宣伝により、保険で数百円払うより「効果的な施術」であると売り込むことで自然な流れで5~6000円の高単価な施術が定着することになります。

(c)患者層拡大

ひと昔まえの整骨院における主な患者層は高齢者と運動部に所属する学生でした。更なる売り上げupと集客を目指して選ばれたターゲットが産後の女性です。女性は妊娠・出産により骨盤が歪み、それが腰痛や姿勢、スタイルの乱れの原因になるといわれており、その対策として「骨盤矯正」が活用されました。整骨院で骨盤矯正という自費診療が拡大した背景には、綿密に仕組まれたマーケティングの存在があったといえます。

骨盤矯正 効果

骨盤矯正に用いられる考え方

骨盤矯正の「何が」良いのか。そして「なぜ」骨盤矯正が良いのか。よく使われる文言について少し考えてみましょう。

(a)歪みを正す

骨盤矯正を受けた経験のある方ならわかるとおもいますが、まず最初に「身体の歪み」を指摘されます。その歪みこそが腰痛や姿勢の乱れの原因であり、骨盤矯正こそがその解決策であると説明されます。しかし実際は「高単価な施術を売る」という目的のために骨盤矯正を勧めてくる現実があります。骨盤矯正の施術では「ビフォーアフターの見せ方」がマニュアル化されていることがほとんどです。施術の前後を撮影することもあります。良くも悪くも身体の歪みは簡単に矯正されるものですし、また再び歪みが発生するのは早いです。外観上の「歪みを正す」のはパフォーマンスといっても過言ではありません。

(b)骨を正す

腰痛の原因に1つとしてよく用いられるのが「骨の位置」です。例えば「腰椎の4番がズレている」「仙腸関節がズレている」といった話を聞いたことがあるとおもいます。簡単な解剖学を理解していればわかることですが、腰椎も仙腸関節も非常に強靭な靭帯で固定されているため、通常では「ズレる」ということは起こり得ません。もしズレた状態があるとすればそれは「靭帯の損傷」でありケガです。しかし骨盤矯正はこれら「骨のズレ」を改善できるかのようなイメージを植え付けることに成功しています。骨のズレを根拠にしている時点で、骨盤矯正は説得力を欠いているといえます。

(c)腰痛、姿勢の改善

ここまでくると骨盤矯正は腰痛から骨盤の歪み、骨の歪み、産後の骨盤調整までありとあらゆるお悩みを改善してくれそうな勢いですが、決してそうではありません。高単価でマニュアル化されているため、新人スタッフでも施術ができる点で運営上のメリットがあります。また保険診療ではないので資格も必要ありません。院の戦略として大きな役割を担っているに過ぎないのが骨盤矯正といえます。

骨盤矯正との正しい向き合い方

骨盤を矯正するという文言がいかにも「効きそう」な施術を連想させますが、訳もわからず院のスタッフに言われるがままに骨盤矯正を受けているだけでは「カモ」にされてしまいます。

(a)効果は一時的

これは骨盤矯正に限らない話かもしれませんが、骨盤矯正がメインのアプローチポイントとしている「歪み」や「ズレ」は時間の経過や習慣によって引き起こされる「結果」なので、骨盤矯正を受けたからといって万事解決とはなりません。患者さん自身が歪みやズレを予防する意識を持つことが必要です。しかし骨盤矯正メニューの誘導トークは「おおよそ10回くらい受けると改善します」です。ここで回数券を提示して割安で受けられることをアピールするところまでがマニュアル化されています。

(b)誰でも出来る技術不要の手技

骨盤矯正は資格不要です。素人でもできます。施術内容は全て形式的にマニュアル化されていて、ストレッチの延長線レベルの手技ともいえます。つまり経験や難しい技術に裏打ちされた施術ではないのです。実際、骨盤矯正を習得するための技術セミナーは1日で完結する内容です。それくらい空っぽで素人でも明日からプロになれるのが骨盤矯正です。

(c)骨を鳴らす手技のリスク

骨盤矯正の手技の1つに「骨を鳴らす」ものがあります。なかには強い勢いをつけて関節をねじり、骨を鳴らすことで一定の効果を示すというものがあります。昔に比べて、骨を鳴らすようなハードな骨盤矯正は聞かなくなりましたが、この種の手技は事故が発生する事例が確実に存在します。骨を鳴らす施術が、あなたの悩みを解決する唯一の方法であるなら仕方がありません。しかしそうでないなら十分にリスクについて検討すべきです。

骨盤矯正の効果を実感するケースもあり、ひとによって受け止め方が違うとおもいます。ぜひ客観的な視点で骨盤矯正を検討してみてください。

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