歩行時の痛み

【盲点】左右の脚の長さが違う? 不調を招く脚長差のお話

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脚長差

あなたの不調は脚長差が原因かもしれません。みなさんこんにちは。笹塚トレース整骨院の石垣です。身体に出る痛みは重い物を持ちあげたり無理な動きをしたといった明確な理由が存在します。しかし脚長差による不調は脚長差による負担がある程度「蓄積」したあとに出現します。つまり明確な理由がなく痛みが出現するのが特徴です。そこで今回は脚長差について施術者目線で解説します。

(a)長さの違う「竹馬」

脚長差とは左右の脚の長さを比較した際に「脚の長さ」そのものに「差」がある場合と、足の長さが変わらないが脚の「位置」が違うことで全体として「差」がうまれる場合とがあります。ここで扱う脚長差は後者の場合です。簡単にいえば「ズレ」のことを指します。体感的には長さの異なる竹馬に乗っている、または片足だけ靴を履いてもう片方は素足で歩くような感覚です。この状況は普通に考えれば凄い違和感を感じるはずですが、人間の身体は良くも悪くもそのアンバランスを補正して上手く適応してしまうわけです。

(b)骨盤の高さが左右で違う

実際の脚長差は上記の通り、脚そのものの長さではなく脚の「位置」によるズレです。このズレが発生する場所として多いのが「骨盤」を中心とする腰や股関節です。通常は骨盤の高さは左右均等です。これが一方が高くてもう一方が低い状態が「ズレ」です。見て判断できるほど顕著なズレや触診でないと判断が難しいズレもあります。

(c)身体が真っすぐではない

脚長差がある人は立ち姿勢においては写真を撮るときに姿勢を直されることが多く、寝ている状態では脚が左右のどちらかに曲がっていてそのことを本人が自覚していないことがほとんどです。また、身体が曲がっているひとは小さな段差に躓いたり靴底の擦り減り具合にも左右差を認めます。

脚長差はなぜ起こるのか?

脚長差が起こる原因は明確な理由がある場合と、長い時間をかけて徐々に形成される場合とがあります。ここでは脚長差が起こるきっかけや要因について解説します。

(a)骨折

成長期における骨形成の中で、骨折は脚そのものの長さに影響を与える要因になります。多くの場合、成長期の骨折は問題を残すことはありません。しかし骨折後の処置やリハビリが不十分であったり骨折した箇所によっては骨の形成や成長に不具合が生じ、脚の長さ、つまりは骨の長さそのものが短くなり、脚長差へとつながります。

(b)過去のケガ

骨折ほどの大怪我でないものの、足首、膝、股関節などの靭帯損傷やハムストリングスやふくらはぎの肉離れなど歩行に関わる部位のケガは脚長差につながります。これらの部位のケガに対して、完治する前に歩行や運動を再開しているケースでは「痛くないように動く」「痛みをかばって運動する」などが歩幅やリズムの乱れにつながり、結果として脚長差が起こります。

(c)生活習慣

誰にでも起こり得る脚長差としては生活における「習慣」「癖」があります。立ち姿勢において「片足に体重を傾けている」ことや座り姿勢において「足を組む」などがあります。これらの状況は長時間であるほど、脚長差への影響は強くなります。

脚長差を疑うべき状況

あなたの症状が、脚長差によって引き起こされているかどうかを判断する基準について解説します。

(a)痛みの理由が見当たらない

普通、痛みには「発生原因」が存在します。例えば重い物を持ち上げたり無理な姿勢をしたなど。また交通事故などの衝撃や転倒といった痛みに至るプロセスが明確です。しかし脚長差が原因の場合、明確な原因やプロセスが不在のことが多く「なぜ痛くなったのかが分からない」という状況になります。また日常生活では痛みが出ないが「運動のときだけ痛みが出る」など特定の動きに限って痛みが出る場合も脚長差が疑われます。

(b)病院の検査で異常なし

脚長差による症状の場合、病院で検査をしても特に異常が見られません。脚長差による影響は「負担の蓄積」なので靭帯や軟骨の損傷は存在せず、しかし筋肉の過緊張、そして過緊張による腱や関節への負担が痛みとなって出現していると考えられます。つまり病院での検査には写らない部分に原因があるのです。

(c)痛みの場所が移り変わる

脚長差による痛みは痛みの場所が移り変わることがあります。脚長差の特徴は「左右差」で、関節の角度や筋肉の緊張度合いなどが左右で異なるのです。これにより負荷の度合い次第で右の膝関節に痛みを感じたり、左のハムストリングスに張り感を感じたりと痛みの場所が変わります。

脚長差が原因で起こる症状とは

脚長差が原因で起こる症状は多岐にわたります。そこで代表的な症状について解説していきます。

(a)各関節の痛み

脚長差が原因で起こる症状で最も多いのが「関節の痛み」です。しかし、関節内部の構造物には異常がなく、主に靭帯や筋肉、腱などに負担が蓄積したことによる痛みを関節周辺で感じている状態です。ぶつけたりひねったりといった要因が無いにもかかわらず、関節周辺が痛む場合は脚長差を疑います。進行したケースでは痛みだけでなく「変形」が認められる場合もあります。

(b)筋肉の痛み

関節の痛みに次いで多いのが筋肉の問題。これは筋肉の張り感の場合もありますが多くは「繰り返される肉離れ」です。内出血を伴うような重症な肉離れではなく「こむら返り」に似た筋肉の過緊張状態が慢性化したものを指します。例えば片方のふくらはぎが常に緊張している、片方のふくらはぎだけが頻繁にこむら返りになる、などの場合に脚長差が考えられます。

(c)腰痛

脚長差そのものは下半身の要因ですが、その影響は上半身にも及びます。脚長差があると歩行時は上半身が左右に揺れながら歩くことになり、この「揺れ」を補正するために片側の腰部起立筋が過緊張を引き起こし腰痛につながります。腰痛を引き起こすような明確な要因がなく、腰の痛みが片側に限定され、かつそこに起立筋の過緊張があれば脚長差を疑います。

(d)背部痛

上述した腰痛と同様に、歩行による補正の影響が腰よりももっと上の背部に出現することがあります。側弯症と混合しがちですが、背骨の変形はなく筋肉の過緊張が片側だけに存在するのが脚長差の特徴です。

(f)関節可動域の制限

脚長差の影響が蓄積した結果、筋肉が過緊張を起こすと関節の可動域にも影響が出ます。本来であれば左右の脚の関節の可動域は同じです。しかし片方の関節の可動域だけが狭いといった現象は脚長差による影響が考えられます。

脚長差を発見する為の視点

上述した内容を、脚長差を発見するための視点としてまとめます。

(a)身体の不調が片側に集中している

明確な原因が無いにもかかわらず、不調や痛みが片方にだけ出現する場合は脚長差の可能性があります。片方だけが痛いという状況は、脚長差によって荷重や歩行に不均衡が生じていると考え、立ち方や座り方、姿勢を見直してみると良いでしょう。

(b)継続した運動で痛みが出現

日常での歩行(30分程度)では問題ないが旅行(数時間程度)では膝が痛くなる、といったケースでは脚長差による不均衡な歩行の負担が継続して30分を超えると負担が限界をむかえて痛みが出ると考えられます。またトレーニングなどで同じ動作を繰り返す場合にも、一定の回数や重量を超えると痛みが出る場合も脚長差またはフォームの左右差(アンバランス)が考えられます。

(c)靴底の擦り減り具合

脚長差による不均衡な歩行が日常的に存在する場合、靴底の擦り減り具合を見れば一目瞭然です。歩き方の不均衡によって、靴底の擦り減り具合も不均衡の状態になっています。他にも足の裏や側面の同じ箇所に「マメ」が繰り返しできる場合や靴下にいつも同じ穴が空くなども脚長差の特徴であり、いずれも「片方」に現れます。

脚長差の改善に必要なこと

脚長差の存在が明らかになった場合、どのように改善していけばいいのかについて解説していきます。

(a)筋肉の硬さを取り除く

脚長差の問題は「脚長差が存在するから筋肉が硬くなる」と「筋肉が硬いから脚長差が憎悪する」という悪循環の状態にあります。脚長差による不均衡状態がどのくらいの期間あったかにもよりますが、まずは痛みを取り除く目的で筋肉の硬さを緩和してあげることが必要です。セルフケアで筋肉を緩和することはほぼ不可能だと思います。脚長差の概念を持った施術者に依頼することが良いでしょう。

(b)均等な動きを身に付ける

これも歩行に関する知識や脚長差の概念がないとなかなか難しいのですが、あなたが当たり前のように歩いているその「歩き方」が間違っていることを認識し、正しい脚の動かし方を訓練しマスターすることが必要です。臨床の現場でも実際に歩き方の間違いを指摘し、正しい歩き方を指導しても「おもうように動かせない」とみなさん口をそろえて言います。荷重のかけ方、歩幅、リズムなど専門的知識を有する施術者に客観的にみてもらうのがよいでしょう。

(c)生活習慣を見直す

脚長差が形成される背景には生活における習慣や癖が大きく影響しています。座り方、歩き方、立ち方、寝方、荷物の持ち方、自転車の乗り方など。なかには本人が全く自覚していないケースも珍しくありません。それくらい何気なくやっている習慣や癖の中に原因が存在しています。一方で、これらの脚長差が形成される要因が改善されないことには、脚長差による影響は継続し、悪循環のまま悪化の一途を辿ることになります。

脚長差の問題を解決することの難しさは「本人が脚長差を認識する」ことが難しい点にあります。治療において筋肉の緊張を取り除くことで痛みを改善することは出来ても、脚長差が改善されなければ再び痛みがぶり返す事になります。まずはあなたの痛みが脚長差によるものかどうかを慎重に分析してみましょう。

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