よくある痛み

柔整師が解説! メカニズムから紐解く、ぎっくり腰への対策

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ぎっくり腰 メカニズム

ぎっくり腰とは何か。一言で説明することが難しいぎっくり腰ですが、発生原因や回復経過などには一定のパターンがあります。このパターンを分析するとぎっくり腰の実像が見えてきます。今回はぎっくり腰のメカニズムについて解説します。

(a)ぎっくり腰、魔女の一撃、急性腰痛

ぎっくり腰は正式名称として「急性腰痛症」という呼称があります。またぎっくり腰を端的に表現した「魔女の一撃」という呼び名もあります。これはすべて同じ意味ですが、いずれも「急激な」「腰の痛み」という意味合いが含まれています。程度によりますが腰に痛みを感じた瞬間から身動きが取れず、回復までに時間を要することになるのがぎっくり腰です。

(b)ぎっくり腰と年代

ぎっくり腰は各年代で起こり得る腰の痛みです。比較的若い年代であれば「過度な運動」「疲労の蓄積」が関係していますし、中高年になれば「運動不足」「不慣れな運動」という要因が関係します。年齢よりも「要因」によってぎっくり腰にかかる頻度や重症度が異なりますが、若年層のぎっくり腰は回復が早く、中高年のぎっくり腰は回復に時間がかかり、慢性化・重症化しやすい傾向にあります。また若い時のぎっくり腰を放置したという要因は、中高年になって重症化の大きな要因となりますので注意が必要です。

(c)一般的な対処法

ぎっくり腰への一般的な対処法は正式名称である「急性腰痛症」の概念に沿っておこなわれます。ぎっくり腰は「急性(急激な)」の痛みという概念なので、痛みは「炎症によるもの」という認識が一般的です。炎症による痛みに対しては「冷やす」ことが推奨されており、足首の捻挫と同様の対処法が選択されます。また腰を動かすと強い痛みが出る為、固定をおこない安静を保つことがぎっくり腰の初期対応です。痛みが軽減し、ある程度動けるようになった段階では徐々に日常生活を取り戻すように「身体を動かす」ことが推奨されています。以前は「絶対安静」だったぎっくり腰も、最近では少しずつでも身体を動かす方が結果的に回復が早いと考えられています。

ぎっくり腰 メカニズム1

理解を深める! ぎっくり腰の正体とは

実際のぎっくり腰はどのようにして発生するのか、その瞬間になにが起きているのか、ぎっくり腰の正体について解説します。

(a)重い物を持ち上げて

ぎっくり腰の発生理由で最も多いのが「重い物を持ち上げて」というものです。状況によっては「重い物」でなくても発生します。つまり持ち上げる「動作」が大きなポイントです。人間の身体の動作で何かを持ち上げるというのは腰を曲げる「中腰」という、腰にとって最も負担のかかる姿勢をとることになります。またひとによっては物を持ち上げる動作ではなく「顔を洗う」「くしゃみをする」など腰を曲げる動作でもぎっくり腰になります。いずれにしても「腰を曲げる」動作がぎっくり腰の大きな発生要因となります。

(b)何もしていないのに

ぎっくり腰で意外と多いのが「何もしていないのにぎっくり腰になった」です。これはあくまでも本人の中で「何もしていない」という認識であるという意味で、実際には発生要因が潜んでいることがほとんどです。具体的には「寝て起きたら腰が痛くなっていた」「普通に生活していたら急に強い痛みが出た」というものです。しかし本人が認識していないだけで腰を曲げるような動作が存在します。別の言い方をすると「時間さでぎっくり腰になる」という状態です。つまり「ゴルフした翌日」「引っ越し作業をした翌日」「筋トレをした翌日」などです。発生要因と実際の発生のタイミングに時間差があり「直接的な要因を認識しにくい」ということです。

(c)継続した負担の蓄積

ぎっくり腰は上記のような「重い物を持ち上げた」「中腰姿勢をとった」「腰に負担のかかる運動をした」といった要因以外にも「負担の蓄積」という要因でも発生します。1度や2度の負担のであれば「蓄積」にはなりません。ひとによっては「3日間連続で運動した」といった比較的軽度な負担の蓄積から「仕事で荷物を移動させる作業を繰り返している」といった中長期的な負担までが発生要因となります。また「デスクワークで座りっぱなし」「歩き方が正しくない」などの継続した負担の蓄積となります。継続した負担の蓄積は、普通のひとならぎっくり腰になるはずのないような軽微なきっかけでもぎっくり腰を誘発します。つまり継続した負担の蓄積が、腰を弱体化させてしまうのです。

治しているからこそわかる! ぎっくり腰のメカニズム

ぎっくり腰のメカニズムは改善のプロセスを分析することで理解できます。つまり治療においてどのようなアプローチによって、どのような結果が得られたかという視点がメカニズムの解明につながります。

(a)筋肉の硬さ、張り感

発生要因や痛みの状態から判断して「ぎっくり腰である」と判断したひとの身体の状態を観察すると「筋肉の肩さ、張り感」が確認できます。これはレントゲン検査などでは写らない「触感」としての評価です。特に痛みを強く感じるポイントの筋肉には硬さや張り感があります。治療では筋肉の硬さや張り感を解消するようにアプローチをおこないます。結果として、非常にシンプルであるものの症状に改善がみられます。軽度のぎっくり腰であればこれで完治にいたることも決して珍しくありません。

(b)筋力低下、偏り

ぎっくり腰を発症した身体にみられる特徴の1つに「筋力の低下と偏り」があります。触った感触のほか、外観上の歪みとして確認できることもあります。このケースではやや慢性化した腰痛がベースにあり、それが悪化したイメージのぎっくり腰であると判断されます。筋力の低下や偏りは短期間で形成されるものではなく、ある程度の期間、負担が継続された結果として引き起こされます。短期間での改善が望めるケースと、長期化するケースとに大別されます。また腰だけでなく、股関節や背中との関連も含めた総合的なアプローチが必要です。

(c)神経の過敏

ぎっくり腰と判断される腰痛の中でも最もアプローチの難易度が高く、余計に悪化するリスクを含んでいるのがこのケースです。腰に限らず、筋肉の緊張が非常に強く、触れただけでも強い痛みを感じる状態です。また痛みで身体を真っすぐに保つことが困難で、歩くこともままならないこともあります。このケースでは単純に筋肉を緩めるだけでは改善が難しく、筋肉の緊張度合いや全体のバランスを見ながら着地点を探します。長いケースだと改善までに1カ月を要することもあります。

ぎっくり腰 メカニズム

ぎっくり腰のメカニズムは非常に複雑です。しかし傾向はパターン化されており、どのようなケースでも一定の再現性をもって対処することができます。しかし、このようなメカニズムを理解していない施術者もあり、治療を受ける際は事前に確認が必須となります。

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