ケガ

足首の痛みは時系列で理解しないと解決しない残酷なお話

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足首の痛み

足首の痛みは「厄介」です。みなさんこんにちは。笹塚トレース整骨院の石垣です。今回解説する足首の痛みはケガによる捻挫ではなく、その後の痛みです。ケガをして治ったと思ったら再発した、または時間が経過して原因不明の痛みが出たようなケースを想定しています。セルフでできることは多くありませんが、今回のようなケースで実際の治療の際に考慮する項目について解説しました。病院や整骨院で治療を受ける際の指標として活用できる内容です。

(a)原因不明は有り得ない

「足首の痛みの原因はわかりません」というケースは臨床の現場では少なくありません。実際問題として患者さんご本人は「ケガをした」という認識がありません。しかし過去に遡って分析すると原因として可能性のある要因がみつかります。治療はここがスタート地点となります。

(b)年代による回復能力

おおよそ、足首の痛みはスポーツなどの運動による捻挫が多いため、その多くは若い年代に起こります。また同時に運動を継続しているために、ケガをしても十分な回復期間を設けられない場合が多く、不完全な治療のまま運動を再開していまうことも多いです。若い年代は「痛みの感覚」が比較的すぐに消失してしまうので「完治した」と認識しがちですが、これは数年の時間を経て「原因不明の足首の痛み」を引き起こしてしまうのです。他方、年齢を重ねるにつれて回復能力は低下していくので原因不明の足首の痛みは慢性化する傾向にあります。

(c)古傷としての痛み

一般的には過去に負ったケガが、時間が経ってから痛みを出すということは知られていない事実だと思います。それは多くの場合で「痛みが消えたら治った」という認識だからです。しかし痛みの感覚が消えた状態は、筋肉や腱などの組織の修復よりも先に訪れる感覚なので実際は「完治していない」まま治療を止めてしまいます。

足首の痛みを引き起こす要因

原因不明とされる足首の痛みは、捻挫などの直接要因ではなく、他の周辺要因によることがほとんどです。つまり足首の痛み「だけ」にフォーカスすると見誤ります。

(a)膝、股関節の痛み

足首の痛みが消えるという現象は、痛みの物質(痛みの感覚を生む体内の物質)が減少することによる要因以外に「痛くないように動く」という要因もあります。つまり痛みをかばって歩いたり体重をかけないように立ち上がったりといった状態です。痛みをかばっての動きは必ず他の部位に負担をかけます。その負担が膝や股関節を酷使してしまうことで痛みが波及していくことがほとんどです。原因不明の足首の痛みは周辺の関節の状態とセットで観察する必要があります。

(b)アキレス腱、ふくらはぎの痛み

膝や股関節といった「関節」だけでなくアキレス腱やふくらはぎの筋肉も同様に、足首の痛みによって強い影響を受けます。アキレス腱やふくらはぎの筋肉の違和感は本人が自覚していないことがあり、必ず触診やストレッチなどの負荷をかけて状態を確認します。

(c)正しくない歩き方

原因不明の足首の痛みは「正しくない歩き方」によっても発生します。歩く動作は通常であれば無意識に行なわれる動きですが、無意識なゆえに正しくない歩き方になってしまっている場合が多く見受けられます。自分では認識しにくい要因なので第三者に目視で確認してもらうことが重要です

(d)前脛骨筋の硬さ

前脛骨筋は足首の曲げ伸ばしに関係する筋肉です。前脛骨筋が硬くなる要因は「サイズの合わない靴」です。サイズが大きい場合やヒールなど足の形状にフィットしていない靴で歩くと無意識に前脛骨筋(スネの側面)が働き、過剰な負担の蓄積につながります。

原因不明の足首の痛みの治療法

原因不明の足首の痛みは手術や投薬といった確立された治療法がありません。しかしマッサージによる筋肉や関節へのアプローチで改善が可能なのでご紹介します。

(a)原因の特定

まずは原因の特定が必要です。過去のケガや上述した正しくない歩き方など足首の痛みを誘発しそうな要因を洗い出します。この要因に基づいて直接的要因、間接的要因を複合的に分析します。ここでは可能性としての仮説を考えます。

(b)筋肉、腱、可動域

次は実際の筋肉や腱の状態を確認します。直接筋肉や腱に触れることはもちろんですが、関節の可動域も左右で比較して違いを探します。経験を積んだ施術者であれば感覚的に筋肉や腱の硬さの違い、可動域の違いを判断することができます。

(c)正しい歩き方の実践

原因不明の足首の痛みにおいて、マッサージでは解決できないのが「正しい歩き方の実践」です。これは本人が意識的に実践しなければなりません。マッサージで筋肉や関節のケアをしても、歩き方が正しくなければ再び痛みが出てしまいます。原因不明の足首の痛みは必ず「マッサージ」と「歩き方」をセットでアプローチする必要があります。

足首の痛み事例集

原因不明の足首の痛みの具体的事例について解説します。当てはまるものがあればぜひ参考にしてください。

(a)足首の捻挫の再発

足首の捻挫は「癖」になる傾向があります。最初は痛みや炎症が強く出現するのでケアする意識が芽生えますが、何度も繰り返すうちに痛みや炎症がほとんど気にならなくなってしまうケースでは「大したことない」と認識してしまいます。痛みや炎症がないからといって捻挫としてカウントしないのは間違いです。

(b)足首捻挫の未治癒

原因不明の足首の痛みで多いのが「未治癒」です。多くのケースで「痛みが消えたから完治した」と認識してしまうことが原因です。つまり「完治したはずなの痛い」状態です。痛みがないから完治したと認識していても、捻挫によって損傷を受けた筋肉や腱、靭帯の修復はまだ完了していない場合があります。この「時間差の治癒」が原因不明の足首の痛みを引き起こします。

(c)正しくない歩き方【ふくらはぎ】

正しくない歩き方の証拠は「ふくらはぎ」に現れます。腓腹筋やヒラメ筋の状態を確認すればすぐにわかることですが、自覚症状としては足首周辺の鈍痛という形で現れることが多い傾向にあります。あとはふくらはぎがつり易い(こむら返り)なども特徴です。

(d)正しくない歩き方【前脛骨筋】

正しくない歩き方によって前脛骨筋(スネの前面)が硬くなるケースが多くあります。これは歩くときに膝がきちんと挙がっていない、地面のちょっとした凹凸でつま先が引っ掛かりつまずいてしまうなどの特徴があります。左右の脚の歩幅が異なるケースや片足に重心を傾けた歩き方でよくみられる特徴となります。

(e)正しくない歩き方【外側重心】

足裏の重心のかけ方において、正しい歩き方の基本は内側重心(親指側)です。現代人の多くは外側重心(小指側)に傾いた歩き方をしており、これによって足首の外側である外踝(そとくるぶし)に痛みが生じます。これは両足が外側重心の場合と片足だけが外側重心の場合とがあります。客観的に観察すれば一目瞭然ですが、実感として認識しにくいのが特徴です。

(f)脚長差

脚長差は脚全体への長期間にわたる負担の蓄積により、左右の脚の長さが異なる状態になっていることを指します。これも自分では実感として認識しにくい要因ですが、左右の靴底の減り具合を見比べると容易に判断できます。

(g)股関節変位

いわゆる「骨盤が歪んでいる」状態です。骨盤と股関節はお互いに正しい位置で正しい動きをしなければ徐々に歪んでしまうものです。この歪み自体は多くのひとでみられるものですが、歪みの程度が顕著になると足首の痛みを引き起こします。

上記で挙げた項目は単体で原因になる場合と、複数の要因が関係している場合とがあります。視野を広くもち、骨盤、股関節、膝、足首といった骨のポイントと、それらを動かす筋肉や腱の状態を観察することが大切です。

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原因不明の原因を見つける思考法

これは原因不明の足首の痛みについてアプローチするときに実際に活用する考え方です。

(a)時系列で考える

多くのケースでは足首が「原因はわからないが急に痛くなった」と訴えます。足首を捻ったりぶつけたりといった明確な要因が見当たらないので「原因不明」となるわけです。しかし「足首の前に痛くなった箇所はないか」を確認すると「数日前は少し膝が痛かった」といった足首の痛みの「前兆となる痛み」が存在します。例えば「一ヶ月くらい前にぎっくり腰になり、腰が痛かったが1週間ほどで痛みは消えた。しかし腰の痛みをかばって生活していたせいか、先週までは少し膝に違和感を感じながら生活してた。でも特に問題ないだろうと考え、昨日は2時間ほど散歩をして歩き回った」といった具合です。

(b)過去の出来事を考える

短期的には痛みが出る1週間前までの行動、中長期的には数カ月から数年の経過の中で、足首の痛みにつながりそうな要因を探します。1週間前の旅行で「観光地を長時間歩き回った」「半年前に足首の捻挫をした」「10年前に骨折した」など過去に遡っていくと原因になりそうな行動が確認できます。つまり本人が「まさかこれが原因とは考えていない」という範疇に原因が存在するということです。時間が経ち、当時の痛みもすっかり消えている状態なので、過去のケガや要因を可能性として連想するのは難しいかもしれません。しかしこのような仮説をもとに、アプローチを試みることで改善が可能になります。

(c)筋肉の硬さの左右差をみる

足首に痛みがある場合はお尻や太もも、ふくらはぎの筋肉に顕著な硬さや張り感が存在します。自分で調べる場合は左右の足で比較するとよいでしょう。病院の医師は筋肉の触診はあまり得意ではないため、触り慣れている整骨院や整体のスタッフの意見を参考にしましょう。

(d)可動域の左右差をみる

筋肉の硬さと同様に、各関節の可動域にも制限が確認できます。やはり左右差で比較するのがわかりやすいですが、整骨院や整体、ストレッチ専門店などのスタッフに確認してもらい、可動域だけでなく負荷をかけた際の抵抗感も評価してもらうとよいでしょう。

(e)靴底の減り方をみる

足首の痛みを感じている場合、上述したように正しい歩き方ができていないことがほとんどです。つまり靴底の擦り減り具合にも左右差が確認できるのです。これは目視で確認できるので容易に実践できます。

(f)靴下の摩耗をみる

正しい歩き方が出来ていない場合、靴下の擦り減り方にも特徴が現れます。踵(かかと)の部分が擦り減り穴が開いているなどは要注意です。

(g)骨盤の歪みをみる

骨盤の歪みは歩くときのリズムに左右差が現れます。これは女性であればスカートやストッキングがねじれてしまう、男性であればベルトがクルクルと回転してしまうといった現象で確認できます。あまり気にしていないケースがありますが、骨盤や身体が歪んでいる場合はリズムの違いにより「回転してしまう」のが大きな特徴です。

(h)足にできる「マメ」をみる

足にできる「マメ」「魚の目」は歩き方を示す「鏡」のようなポイントです。マメや魚の目は通常であれば存在しません。なぜマメや魚の目が形成されるかといえば「そこにストレスがかかっているから」です。つまり特徴的な足の着き方、動かし方をしている最たる証拠なのです。

原因不明の足首の痛みに関する残念な事実

原因不明の足首の痛みを抱えた患者さんがなぜ整骨院にくるのか。そこには残念な事実が隠れています。

(a)西洋医学的検査では原因不明

西洋医学的検査とはレントゲンや超音波などいわゆる画像診断を指します。原因不明の足首の痛みは骨折や不全骨折(ヒビ)、筋肉の断裂といった画像に投影されるとはほとんど関連がありません。例えて表現するならば「金属疲労」です。医師は検査における数字上のデータや画像の分析が仕事です。関節や筋肉に直接触れることはほとんどないので硬さや張り感の比較は専門外です。このような事実があるため、患者さんは筋肉や関節に触り慣れている整骨院を選択するのです。

(b)古傷の概念がないとアプローチできない

西洋医学には「古傷」という概念がほとんどありませんし、過去のケガに対して治療することもありません。なぜなら検査などによって状態を明らかにした上で異常が認められなければ「問題なし」と判断するからです。問題が無いので治療もできないし必要もないというスタンスです。一方、関節や筋肉に触り慣れている柔道整復師や整体師、理学療法士、作業療法士が古傷のアプローチに長けているかというと、そうでもありません。マッサージが主戦場とする東洋医学において「古傷」という概念は存在するものの、そのアプローチ方法や考え方、捉え方は確立された概念がありません。古傷における治療スキルは施術者個人の経験や仮説検証の繰り返しによって作られるものと理解しなければなりません。

(c)改善までに時間がかかる

足首の痛みは改善までに時間がかかることが多い傾向にあります。直接的なケガ(捻挫など)と違い、まさに金属疲労のような長期間の負担が蓄積された「結果」として足首の痛みが表面化しているので、改善までも時間を要します。他方、時間をかければ改善が可能であり、昔のケガだからといって諦める必要もありません。

(d)膝や股関節の問題を併発していることが多い

原因不明の足首の痛みが厄介だと感じるのは、同時に膝や股関節、骨盤などにまでその影響が波及してしまう点にあります。通常なら「痛みが出た」時点がスタートですが、原因不明の足首の痛みが出現するようなケースでは「痛みの感覚が無いだけで負担は以前からかかっている」状態です。つまり痛みが出るずっと以前からスタートしていたわけです。足首の痛みがあっても激痛でなければ放置しているというひとも多いとおもいますが、原因がわからない痛みは以前からの蓄積の結果として表面化している「痛み」の可能性があることを理解することが重要です。

原因不明の足首の痛みは、痛みが表面化するずっと以前から水面下で悪化が進行しているケースがほとんどです。放置している期間が長ければ長いほど、改善までに時間がかかりますし、手遅れになってしまうと人工関節などの選択肢を検討しなければなりません。

足首の痛みは、人間にとってもっとも基本的な動作である「歩行」に大きな影響を及ぼします。軽視することなく、まずは医療機関へ相談してみましょう。

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