慢性的な痛み

手首を曲げると痛い! 筋肉のプロが原因と本格セルフケアを解説

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手首 曲げると痛い

手首を曲げると痛いと感じて「腱鞘炎かも!?」と考えるのは時期尚早かもしれません。手首の痛みは腱鞘炎以外にも考えられる原因があり、原因の特定を見誤ると改善が遅れてしまうこともあります。今回は筋肉による手首の痛みについて解説します。

(a)腱鞘炎

手首の痛みで真っ先に思い浮かぶのが「腱鞘炎」です。運動や日常生活で手首を酷使したことが原因で引き起こされる手首の「炎症による痛み」です。腱鞘炎は同じ動作の繰り返しや、無理な手首の角度での酷使が原因のため、手首が痛くなった経緯を考えれば腱鞘炎であるかの判断は比較的容易です。また炎症の痛みなので手首を動かさない状態でもジンジンと痛みを感じたり、少しの動作で激痛が出るといった症状でも判断ができます。反対に、腱鞘炎を引き起こすような要因がなく、手首を曲げる動作でのみ痛みが出る場合は腱鞘炎「以外」の要因を考える必要があります。

(b)捻挫などのケガ

手首の痛みは、手首の関節を捻挫することでも引き起こされます。「転倒して手をついた」「強い力で手を引っ張られた」などです。転倒や強い外力など手首が痛くなった要因が明確のため、腱鞘炎と判断されることはないと考えられます。捻挫は腱鞘炎とは異なり、炎症や靭帯損傷が伴うため、対処法も腱鞘炎とは大きく異なります。単に安静にしているだけでは完治が難しく、一定期間の「固定」が必要です。また固定が終了したあとは、関節可動域の回復を目的としたリハビリが必要です。誤って腱鞘炎と判断してしまい「放置しておけばそのうち治るだろう」と考えていると関節の可動域が狭くなったり難治性の痛みを引き起こすことになるため注意が必要です。

(c)筋肉の硬さによる痛み

臨床の現場では手首の「筋肉の硬さによる痛み」が多くみられます。患者の訴えは「原因がわからない」「気が付いたら痛みがあった」です。つまり明確な要因がなく引き起こされる手首の痛みが「筋肉の硬さによる痛み」であると判断されます。逆説的ですが、原因がわからない手首の痛みに対して、筋肉へのアプローチをおこなうことで改善が認められることから「筋肉の硬さによる」と判断しています。炎症はなく、動かさなければ痛みが出ないのが特徴です。反対に「コップを持つ」「バックを持ち上げる」など特定の動作では必ず痛みが誘発されます。今回のテーマである「手首を曲げると痛い」は「筋肉の硬さによる痛み」と考えることで、適切な処置方法が判断できます。

腱鞘炎、捻挫でない場合、筋肉による痛みの可能性がある

手首が痛くなった経緯から考察すると、腱鞘炎や捻挫の可能性が低い場合、筋肉が原因かもしれません。ここでは手首の痛みと筋肉の関係について解説します。

(a)手首の動き その1「回外と背屈」

手首の動きは、手首ではなく前腕に位置する筋肉によってコントロールされています。前腕の筋肉の状態が悪化することで、手首に痛みを引き起こすと考えられます。前腕の筋肉を悪化させる要因として「回外と背屈」があります。

手首 曲げると痛い

これは主に女性が「ウェイトレスがトレーを片手で持つ」「腕にバックをかける」ときの状態です。荷物を腕にかける行為(回外と背屈)が、腕の筋肉の状態を悪化させてしまいます。また卓球やテニスのバックハンドも手首に回外と背屈に似た動きが強制されます。注意が必要なのは実際に腕に荷物をかけているときは手首に痛みがなく、ドアノブを握るときや物を持ち上げる際の「手首を曲げる動き」で痛みが出る点です。卓球やテニスも同様に、運動時は痛みが気にならず、日常生活で痛みを感じるケースが多い傾向にあります。荷物を腕にかける行為は手首を動かす筋肉にとって「負担」であることを理解しましょう。

(b)手首の動き その2「回内と底屈」

上記の回外と背屈とは逆のパターンで「回内と底屈」があります。

手首 曲げると痛い

これは主にパソコンで「キーボードを操作する」動きです。手首にとってストレスを感じない体勢でキーボードを操作しているつもりでも、手首には回内と底屈、特に「回内」という手首を捻る動作が強制されてしまいます。回内と底屈が強制された状態が長時間、そして長期間にわたり継続されることで、前腕に筋肉の状態が悪化します。これにより日常生活で「手首曲げると痛い」という状況が誘発されると考えられます。同じ動作の繰り返しが原因となって引き起こされる腱鞘炎とは異なり、同じ姿勢(回内と底屈)が継続されることが問題となります。これを予防するには両腕の間隔を広く配置することがオススメです。

手首 曲げると痛い

(c)手首の動き その3「撓屈()とうくつと尺屈(しゃっくつ)」

手首には回外と背屈、回内と底屈のほかに「撓屈と尺屈」があります。撓屈は手首を親指側に曲げる動き、尺屈は小指側に曲げる動きです。

これはパソコンのマウスを操作するときの動きです。パソコンの画面上でマウスのカーソルを右に移動させるときが「撓屈」で、左に移動させるときの手首の動きが「尺屈」です。マウスの操作を頻繁に、かつ細かく動かすことを繰り返すことで、前腕に筋肉を酷使することになります。また尺屈はキーボードの「Enterキー」を小指で叩く際の動きでもあります。これらの動作で前腕の筋肉にかかる負担を少しでも減らすためには、手首だけの動きではなく「腕ごと動かす」ことが効果的です。

手首には前腕の筋肉に負担を強いる動きが多くあります。またそれがパソコンの操作で必要となるため、簡単に原因を取り除くことができないという側面があります。

筋肉による痛みを本格セルフケアしよう[図解]

筋肉の硬さによる手首の痛みを改善する際に、実際にアプローチする筋肉についてセルフケアをご紹介します。

(a)手首の痛みを改善する「筋肉」の触り方

1,手首背面にある骨の出っ張り尺骨茎状突起(しゃっこつけいじょうとっき)を見つける。

手首 曲げると痛い

2,出っ張りから前腕の外側に位置する骨を肘に向かって触り、肘付近の最も出っ張った部分(肘頭)を確認する。

手首 曲げると痛い

3,肘頭からおおよそ指4本分程度の距離に位置する前腕の筋肉のボリューム感を確認する。骨の感触が非常に硬く触れるのに対して、筋肉の感触は弾力があります。骨は押しても何も感じませんが、筋肉は圧迫感や痛みが感じられます。

(b)実際にセルフで筋肉を刺激する方法

肘頭からおおよそ指4本程度の距離にある前腕の筋肉が確認できたら、実際に刺激をしてみましょう。単純に「押す(指圧)」という刺激の方法で問題ありません。自分で気持ちが良いと感じる程度の強さで押しましょう。痛みを我慢して押し続けるのは、余計な痛みを誘発する原因になります。慣れてきたら少し強めに押してみたり、また押す際の「角度」を微妙に変化させてみるとまた違った感覚の刺激を楽しめます。

手首 曲げると痛い

(c)セルフケアの頻度について

ご紹介した方法は「握力」を利用した押し方になります。あまり長時間おこなうと手が疲労してしまいます。気が付いたタイミングで「腕をグリグリする」程度の感覚が良いでしょう。すでに手首に痛みがある場合は、セルフケアでの改善が難しい場合があります。そのときは無理せずに整骨院など筋肉に精通したお店を利用しましょう。

病院では「手首を曲げると痛い」という患者の訴えに対して「腱鞘炎の可能性がある」と判断されることが多いようです。腱鞘炎であれば湿布や消炎鎮痛剤などの対処で改善されます。しかし筋肉の硬さによる手首の痛みの場合は湿布や消炎鎮痛剤では改善されません。治りが悪い、腱鞘炎や捻挫といった要因がない場合は「筋肉の硬さ」の可能性を検討してみましょう。

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