痛みをとるために

実は腰に悪影響?! 腰痛で背筋を鍛えてはいけない3つの理由

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腰痛 背筋

腰痛に悩むひとが一度は考える「背筋」の強化。腰痛の原因として指摘される「背筋が足りないから」「腹筋と背筋のバランスが悪いせいで」などについて腰痛治療の視点から分析して解説します。

腰痛 背筋

(a)腰と背中の筋肉に区別はない

一般的に「背中」と「腰」は異なる部位を指し、背骨においておおよそ上半身の上半分が背中で下半分が腰と表現されます。しかし筋肉の構造や配置の点からみると、背中と腰は「同じ筋肉」によって構成されています。上半身を支える「脊柱起立筋」は非常に強靭な筋肉で、首から骨盤まで広く配置されています。背中と腰という概念は下記で解説する背骨の機能による「動き」を中心とした考え方であり、筋肉としては「背中の脊柱起立筋」「腰の脊柱起立筋」となります。つまり腰と背中は「同じ1つの筋肉」のため、互いに関連があることになります。

(b)腰骨と背骨は似た構造でも機能が異なる

背骨は椎骨(ついこつ)というブロック状の骨が積み重なった形状をしています。背骨全体の構造は似ているものの、部位によって機能が異なることから、背中では胸椎(きょうつい)、腰では腰椎(ようつい)と区別して名前がついています。一方で背骨は全体として「連動した動き」をします。そのため、背骨のどこか一部分に問題が発生した場合でも、その影響は近隣の背骨にまでおよびます。つまり背中(胸椎)に問題があれば腰(腰椎)にも問題が発生することになります。さらに背中と腰は同一の筋肉によってコントロールされていることを考慮すると、まさに「お隣さん」の関係にあります。

(c)背骨の「胸腰椎移行部(きょうようついいこうぶ)」がポイント

胸腰椎移行部とは胸椎と腰椎の境目に当たる部分で、構造的に肋骨の有無で判断します。上半身を左右に捻る(回す)という動きにおいて、上半身の上部である胸椎の可動域は比較的狭く、上半身の下部である腰椎は比較的広い可動域があります。つまり胸腰椎移行部付近は背骨の可動域において大きく「変化(可動域が狭い→広い)」するポイントなのです。ここで視点を筋肉に移し、背中と腰の両方に関係する脊柱起立筋について考えると、背中の脊柱起立筋は比較的硬く、腰の脊柱起立筋は比較的柔らかいという傾向が顕著に現れます。また背骨の形状を示す「S字カーブ」における湾曲において最もカーブが急峻になる部位も胸腰椎移行部です。

腰痛 背筋

背中と腰は位置関係、機能、構造、筋肉など様々な点において関連があります。それゆえに腰痛の改善に背中のアプローチは欠かせません。しかし下記で解説する「背筋強化」については誤った認識が存在していると柔道整復師である筆者は考えます。

実は悪影響?! 背筋強化の誤った認識とは

腰痛改善の方法の1つとして「背筋の強化」が知られています。腰痛と背中(背筋)が深く関連していることは上記のとおりですが、腰痛の改善を目的に背中(背筋)を鍛えるのは注意が必要です。

(a)背筋の筋力不足

重量物を持ち上げたときに起こるぎっくり腰ではなく、デスクワークで腰が辛いといった慢性的な腰痛に対して「背中の筋肉が不足していることが原因」「背筋を鍛えれば腰痛が改善する」といった見解があります。しかし上述した脊柱起立筋は睡眠時以外は常に活動している筋肉であり、正常な日常生活を送っている人間の背筋が「不足する」「弱い」といった状況になることは考えにくいのが現実です。また習慣的に筋トレをおこない、背筋を通常より強化している場合に腰痛が起こらないかというと、そうではありません。腰痛は筋骨隆々でも発生します。背筋が腰痛と関連していることと、背筋の強化が腰痛改善に有効かどうかは別問題であるといえます。

(b)猫背の改善

猫背は背中が丸くなる状態を指します。猫背を引き起こす要因として「背筋の弱さ」が指摘されます。背筋が「不足する」「弱い」といったことに関しては上述の通りです。猫背のひとの背中に触れると分かることですが、非常に筋肉が「硬い」状態です。強い緊張と張り感、マッサージや整体で刺激をしても身体が拒絶しているかのような硬さです。非常に硬くなった背筋を、さらなる筋力トレーニングで強化することが猫背の改善につながるとは考えにくいものがあります。また猫背は筋肉による要因の他にも「姿勢」「バランス」としての影響も強く受けます。高齢者は足元の不安定感を補うために背中を丸める姿勢をとるといわれており、一般成人でもケガなどにより足首に不安定感があるケースでは背筋が異常な緊張状態となることがあります。

(c)腹筋と背筋のバランス説

腰痛の原因として「腹筋と背筋のバランスをが悪い」といった見解があります。しかし腹筋と背筋のバランスついて基準はありません。また、個人によって筋肉量は異なることから説として立証が不可能に近いといえます。具体的にどのようなバランスが理想なのか、だれにも判断ができません。この説は「鍛えること」を前提とした見解であり、腰痛の改善に役立つかどうかは根拠が不足しているといえます。

上記の通り、筋肉が豊富でも腰痛は起こり得る、猫背は背筋以外の要因が存在する、筋力のバランスは個人差が大きいという点で、背筋の強化が腰痛改善につながると考えるのは難しく、さらなる悪化にもつながりかねないといえます。

腰痛改善に役立つ背筋アプローチとは

腰痛改善を目指すうえで、背筋への直接的なアプローチはもちろんですが、間接的にアプローチすることで背筋の状態を改善し、結果的に腰痛を改善へと導くことができます。

(a)お尻と太ももの筋肉

猫背における「姿勢」「バランス」のアプローチとして「お尻と太ももの筋肉」へのアプローチがあります。お尻と太ももの筋肉は上半身の姿勢やバランスの微調整に携わる重要な筋肉です。実際、腰痛を抱えるひとの多くはお尻と太ももの筋肉に頑固な硬さがあり、施術によって柔軟性を取り戻すことで「背筋が伸びる」という感覚を作り出すことができます。人間は足元(下半身)がしっかりと地を踏んでいる状態が最も安定し、不安定な足元では背中を丸くして不安定感を補う姿勢をとります。つまり足元の安定感を高めることが、猫背を予防することにつながるのです。

(b)ドローイングトレーニング

ドローイングとは「お腹を引っ込める」トレーニングです。息を吐きながらお腹を凹ますとより効果的で、意識して習慣化することがオススメです。特に肥満体形でお腹が出ているような体形(姿勢)の方には腰痛予防として効果が期待できます。お腹を引っ込めることでS字カーブの胸腰椎移行部の湾曲を軽減することができます。これは腰痛における「反り腰」の改善につながります。また下記で解説する胸腰椎移行部を境目とした脊柱起立筋の硬さの「ギャップ」の軽減に効果的です。

(c)背中と腰の筋肉の「ギャップ」

これは腰痛治療の際にアプローチするポイントになりますが、背筋が硬く、腰の筋肉が比較的柔軟性がある場合に、胸腰椎移行部では硬い筋肉と柔軟性のある筋肉が隣接することになります。性質(硬さ)の異なる筋肉が隣接する部分はほかの部分と比べて負担がかかりやすく、また強度も弱い特徴があります。またS字カーブの湾曲が強い部分でもあります。この場合は背筋にアプローチをおこない、腰の筋肉との「ギャップ」を軽減してあげることで腰痛の改善につながります。ストレッチポールなどの活用して背筋の柔軟性を高めておげることもオススメです。

背筋と腰痛の関連は、腰痛の改善を目指す上では深い関りがあります。しかし背筋の不足、強化が腰痛改善に役立つかといえば疑問が残ります。背筋の強化は反対に腰痛を悪化させる印象が強く、特に「反り腰」のケースでは背筋のトレーニングは中止を指示することがほとんどです。背筋を強化する際は腰痛との関連を考慮し、慎重に判断しましょう。

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